ご挨拶

大会長ご挨拶

木戸 尚治

第42回日本医用画像工学会(JAMIT)大会を2023年7月27~29日に大阪大学中之島センターにて開催させて頂くことになりました.大会のテーマは,「臨床サイドからみた医療AI~あらたなる飛躍をめざして~」と致しました.

大阪大学中之島センターは,大阪大学医学部が吹田に移転する前に立地した場所にあり,私もこの地で学生生活を送りました.この場所は梅田の繁華街に大変近くて賑やかですが,最近では,整備が進み国立国際美術館,大阪中之島美術館や大阪市立科学館などが集積して文化発信の地となっています.また緒方洪庵が江戸時代後期に大坂船場に開いた蘭学の私塾である適塾も徒歩圏内にあり,いわば大阪医学の発祥の地であります.

ホームページに掲載した太陽の塔は,現在の大阪大学医学部近くの万博記念公園にあり,大阪のアイコンとして大変有名です.背部の「黒い太陽」についてはあまりご存じないかもしれませんが,過去を象徴しているとされています.これは会場の中之島センターが大阪大学医学部発祥の地にあることへのメタファーでありますが,本年の大会が例年とはやや趣を異にして「医」の側面を強調した大会にしたいという思いからでもあります.写真の撮影は休日に私がおこないました.

特別講演は本大会のテーマにふさわしいお二人にお願い致しました.お一人目は,大阪大学大学院医学系研究科感染制御医学講座教授の忽那賢志先生です.忽那先生は,皆様もよくご存じのとおり,現在COVID-19診療の第一線でご活躍されています.ご講演の内容は,「新興再興感染症とCOVID-19 これまでとこれから」ということで,COVID-19を含む新興再興感染症を幅広く解説していただきます.また,お二人目は,慶應義塾大学医学部予防医療センター副センター長の百島祐貴先生です.百島先生は画像診断の教科書を多数ご執筆ですが,医学史に関しても造詣が深く多くの著書をご執筆されています.お話しいただくのは,「画像診断の歴史」です.以前に百島先生のご講演を拝聴しましたが,大変面白くて理解しやすく,医学系・工学系を問わず大変有意義なご講演になると思います.

特別企画は,AIホスピタルプロジェクトの現在についてです.AIホスピタルによる高度診断、治療システムは,「内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」で採択された国家プロジェクトですが,AIによる医療分野における社会課題の解決を目指しています.本特別企画においては,プログラムディレクターとしてこのプロジェクトを進めてこられた医薬基盤・健康・栄養研究所理事長の中村祐輔先生に全体を俯瞰するご講演をいただき,大阪大学,慶應義塾大学,国立成育医療研究センターの先生方による各施設での取り組みをご紹介いただきます.

シンポジウムでは,3つの話題を提供します.ひとつめは,今最も元気のある医療系ベンチャー企業によるAI開発のホットな講演です.病理,眼底,内視鏡の各分野で活躍されている先生方で,全員が医学系出身と学会のテーマにふさわしい方々です.次に,国内でも導入が始まっている次世代型検出器を搭載したフォトンカウンティングCTに関して,技術や臨床に詳しい先生方に解説をいただき,次世代CTへの理解を深めていただきたいと思います.また,前回より始まった若手研究者によるシンポジウムも引き続きおこないます.若手研究者の方々がこのシンポジウムによる交流をとおして医用画像工学分野で活躍してくれる一助になればと思います.チュートリアル講演やハンズオンセミナーも例年通り開催します.できるだけ多くの方々に参加いただき医用画像工学に関する知識や技術を深めていただければと思います.

日本医用画像工学会大会は,「医」と「工」が対等に参加することを目標としていますが,最近は「工」主体の時代が長く続きました.2021年は慶應義塾大学医学部放射線科の陣崎雅弘教授,2022年は名古屋大学大学院情報学研究科の森健策教授が大会長をされて,再び「医」と「工」が循環するよい流れができてきたのではないかと感じています.

COVID-19は終息する兆しをみせませんが,多くの研究会や学会がオンラインからオンサイトに移行しつつあります.本大会は現地参加でおこなう予定ですが,オンサイトによる学会は人の交流などのオンラインにない魅力があると思います.多くの方々にご参加いただけるようにお願いしたいと思います.

2022年12月

第42回日本医用画像工学会大会
大会長 木戸 尚治(大阪大学)

学会長ご挨拶

工藤 博幸

第42回日本医用画像工学会大会(JAMIT 2023)を,会期7/27(木)~7/29(土)にわたって,大阪大学中之島センターにて(COVID-19の状況によりオンライン開催に変更の可能性あり)、木戸尚治先生(大阪大学)大会長のもと開催させていただくことになりました。COVID-19の感染者数が増加と減少を繰り返し予断を許さない状況でありますが、その状況や国・自治体・大学の方針、他学会の会合の開催状況を鑑みながら現地開催を決定して現在精力的に準備を進めている最中です。JAMIT2023のテーマは、木戸尚治先生に「臨床サイドからみたAI~あらたなる飛躍をめざして~」と決定していただきましたが、その意図を以下に述べさせていただきます。工学は実世界の問題に応用する段階まで完成させ人間生活や社会に役立つことがゴールの学問であり、我々も様々な医用画像技術を臨床に役立てることを目指さなくてはなりません。2010年代中盤から始まったAI技術(特に深層学習や機械学習)を応用した様々な医用画像技術は基盤技術がほぼ完成してきた状況にあり、今後は臨床応用や産業化にシフトした研究開発が進んでいくもと予想されます。そこで、JAMITで長年活躍して多様な成果をあげられAI技術に長けている放射線科医の木戸尚治先生に大会長をお願いした所、ご快諾いただき上記の主旨を意識したプログラムを構築していただきました。また、JAMITの学会の在り方として、工学系に偏らず医学系の会員数やアクテビティを増やし医学と工学の融合領域を扱う学会にしたい、という話もJAMIT理事会や私の周辺ではよく話題になり、上記の主旨で大会を実施するモチベーションの一つになっていると考えています。

準備の進捗状況ですが、本挨拶を執筆している2月上旬の時点において、既に木戸先生を中心の組織委員会(プログラム委員長:平野靖先生(山口大学)、大会長補佐:鈴木裕紀先生(大阪大学))でご準備いただいた企画物はほぼ決まっており、以下にその全体像を紹介させていただきます。2件の特別講演は、大阪大学の忽那賢志先生に「新興再興感染症COVID-19 これまでとこれから」のご講演、慶應義塾大学の百島祐貴先生に「画像診断の歴史」のご講演、をお願いしました。両先生にお考えいただいた講演タイトルは、我々医用画像工学の技術者の誰もが興味を持つ魅力的なタイトルで、また両先生とも各々の分野のリーダーで大変ご高名であると同時に誰にでも分かりやすくお話しされるのが上手とうかがっており、私自身薄学ですが拝聴するのを大変楽しみにしています。シンポジウムは、AIの臨床応用や産業化を意識した「ベンチャー企業が挑むAI開発」、及び次世代のCT技術のブレークスルーと期待されている「フォトンカウンティングCTの衝撃」、の2件を企画しました。加えて、今回の大会のテーマを意識して、特別企画「AIホスピタルプロジェクトの現在」を企画しました。最近のJAMIT大会と比較すると、臨床応用や産業化に関するご講演が多めの作りになっています。ので、工学系分野の参加者の方は医学系に近い新鮮な内容に接する機会、基礎研究分野の参加者の方は産業化のような新鮮な内容に接する機会になるだろうと考えています。最後に、JAMIT2022から新たに開始したシンポジウム「JAMIT の未来をつくろう」を継続して実施することにしました。このシンポジウムで取り扱う内容は若手研究者を意識したもので、「研究の方法論や様式が目まぐるしく変化する現代において、若手研究者が元気に活躍して成功を納めJAMITの未来を作るにはどうすればよいか」という大変難しいながら重要な問題です。元気のよい若手研究者に思いや本音を述べてもらう、年配研究者から若手研究者に問いかけ、のようなスタイルのものを考えています。JAMIT2022では若手の様々な本音や思いが聞けてその中で実現可能なものは理事会で実現を進めている状況ですが、時間が限られていたため「JAMIT の未来をつくろう」を継続的に数年続けることで、現在の若手の人々が中心の次世代JAMITになる時にどういう方向性がよいかが具体的に見えてくるのだろうと期待しています。例年好評のハンズオンとチュートリアル講演会はJAMIT理事会の教育委員会で内容を企画しており、ハンズオンは既に過去の大会で参加済の方でも新しいより高度の内容を学びステップアップできる作りの形態、チュートリアル講演会は今後研究が進むと予想される深層学習を用いた医用画像処理の新しい方向性を整理してまとめた「深層学習の医用画像応用の新潮流」のタイトルで準備を進めています。他には、JAMIT2021から様式を改めた田中栄一記念賞受賞者講演を含む会員集会、二日目と三日目のランチョンセミナーを予定しています。一般演題は100件の投稿を目標にして3月上旬から演題募集を開始する予定で、会員の皆様方から多くの投稿をお待ちしています。講演の形態は、全て口頭発表で予稿集は最大2ページのショートペーパーを予定しています。

会場の大阪大学中之島センターは、皆さんご存じのように中州の場所に存在し、近年再開発が進み多くの観光スポットや飲食店が存在するエリアで繁華街にも近い便利がよい立地です。私は10年ぶりですが前回訪問した時とは様相がかなり変化していると予想され、大変楽しみにしている所です。COVID-19がおさまりアフターファイブの時間を利用した交流、懇親会などができる状況になるとCOVID-19以前のJAMIT大会に戻りよいのでしょうが、予断は許さず無理はできません。JAMIT2021(慶応義塾大学)はハイブリッド開催しましたが会場にお越しいただいた参加者数はかなり少なく、JAMIT2022(名古屋大学)では参加者数は244名で例年に近い状況まで戻り、今回は例年以上の参加者数で大成功にしたい所です。が、無理はできず国・自治体・大学の指示に従い参加者の安全を守らなければならず、その決定を木戸先生と慎重に行い状況が変化したらタイムリーに皆様にお伝えします。皆さん、不確定な要素は色々ありますが、何があっても医用画像工学発展の火を弱めてはいけないというのがJAMITのスタンスであり、是非JAMIT2023に参加して医用画像工学の益々の発展を味わっていただけたらと考えています。

日本医用画像工学会(JAMIT)
会長 工藤 博幸