特別講演

特別講演 1:新興再興感染症とCOVID-19 これまでとこれから

第2日 7月28日(金) 10:00-11:00

忽那 賢志先生

忽那 賢志
(大阪大学大学院医学系研究科 感染制御学)

[抄録]
流行から3年が経ち、mRNAワクチンは感染者・重症者を減らすことに大きく貢献した。また当初は重症患者のみにデキサメタゾンやトシリズマブなどの治療が行われていたが、徐々に軽症患者の重症化予防のための治療薬が開発されるようになり、早期診断・早期治療によって予後を改善できることが明らかとなった。
このように、COVID-19に対する診断・治療・予防は大きく進歩した一方で、SARS-CoV-2は変異を繰り返しながら性質を変え、感染力の増加や免疫逃避といった能力を獲得してきた。従来のmRNAワクチンの感染・発症予防効果は大きく低下し、特にオミクロン株の拡大以降は多くの人が感染した。2023年5月現在、日本では4割の人が過去にCOVID-19に感染したと考えられ、徐々に感染が広がりにくい状況が形成されつつある。今後は、重症化する人をできる限り減らしながら、流行の規模を小さく保ちつつ、ゆっくりと既感染者が増えていくことで流行が起こりにくい状況に近づいていくことを目指すことになるが、全く性質の異なる変異株が出現した場合には感染対策の揺り戻しが起こることも可能性としては想定しつつ、緩和を進めていく必要がある。

[略歴]

2004年3月
山口大学医学部卒業
2004年4月
関門医療センター 初期研修医
2006年4月
山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター
2008年10月
奈良県立医科大学附属病院 感染症センター医員
2010年4月
市立奈良病院 感染症科 医長
2012年4月
国立国際医療研究センター 国際感染症センター フェロー
2013年10月
同 国際感染症センター 医員
2018年1月
同 国際感染症センター 国際感染症対策室医長
2021年7月
大阪大学大学院医学系研究科 感染制御学 教授
大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長 感染症総合教育研究拠点(CiDER) 人材育成部門 副部門長
2022年7月
大阪大学医学部附属病院 感染症内科 診療科長

特別講演2:画像診断の歴史

第3日 7月29日(土) 13:30-14:30

百島 祐貴先生

百島 祐貴
(慶應義塾大学病院予防医療センター)

[抄録]
1896年1月1日,レントゲンによるX線発見の論文が刊行されると,わずか2週間後の1月17日には最初の臨床例が撮影され,世界中でX線診断が試みられた.その後1年間に出版されたX線関連の論文は1000編以上,書籍は50冊におよび,医学界がX線に寄せた関心,期待の大きさがうかがわれる.その一方,体内を透視できれば病気はすべてわかる,医者などいらなくなると言われたが,まもなくその限界も明らかとなり,以後様々な撮影法,検査法が工夫された.本講演では,X線検査,超音波,CT,MRIの発展,ならびにこれと密接な関係にある放射線障害,防護の歴史を振り返る.

[略歴]

1982
慶應義塾大学医学部卒業.内科研修医
1983
同放射線診断科研修医
2002
同放射線診断科専任講師
2015
慶應義塾大学病院予防医療センター 副センター長(画像診断担当)
2017
国際医療福祉大学非常勤講師(医学史担当, ~2023)
2023
慶應義塾大学病院予防医療センター 特任講師