チュートリアル講演

第13回JAMITチュートリアル講演会(教育委員会企画)

(コニカミノルタ科学技術振興財団 JAMITハンズオンセミナー 連携企画)
「医用画像工学における最新AI研究の課題とその展望について」

第42回日本医用画像工学会大会のプログラムの一環として,「第13回日本医用画像工学会(JAMIT)チュートリアル講演会 「医用画像工学における最新AI研究の課題とその展望について」を第1日目の午後に開催いたします.チュートリアルでは,医用画像工学に携わる若手研究者や最新の動向を得たい第一線の研究者を対象として,現在の研究に役立つテーマを専門の研究者が講演いたします.

日時:
7月27日(木) 13:00~16:00
座長:
滝沢 穂高(筑波大学)
中田 典夫(東京慈恵会医科大学)

講演 1:
(TU1)医用画像工学における大規模言語モデルの基礎

中田 典生(東京慈恵会医科大学)

[抄録]
本講演では,医用画像工学における大規模言語モデルの理論と応用に焦点を当てる.まず,核心であるAttentionメカニズムとTransformerアーキテクチャの理論について紹介し,これらの技術が大量のテキストデータからどのように情報を抽出するかを明らかにする.その後,医療現場での具体的な応用例に移り,医療記録や医療画像の説明などのテキストデータと実際の医療画像との結びつけの重要性を解説する.大規模言語モデルはその複雑な関係性を理解する手助けをすること.また大規模言語モデルの持つ創発的能力が,医用画像工学の未来にどのような影響を与えるかについても議論する.この講演を通じて,参加者は大規模言語モデルの基本理解を深め,その医用画像工学への応用について新たな視点を得ることが期待される.

講演 2:
(TU2)脳MRIのAI解析と大量データ解析からみえる課題

森   進(ジョンズ・ホプキンス大学)

[抄録]
医療画像データはデジタル情報であるにもかかわらず,活用されずに眠っている状態である.その活用方法としては,個々の患者の画像診断と人口レベルでの病態解析が考えられる.脳画像の特徴抽出を長年開発してきた演者は,現在古典的機械学習と最近のAIの双方を用いて,脳MRIの大量データ解析を行っている.そこから得られた知見として,医療画像大量データ解析にはいくつかの「壁」がある.それは,「AI技術の壁」,「大量データ収集の壁」,「教師データ正確性の壁」,「画像情報の包括性の壁」,「データの均一性の壁」,そして最も大切な「抽出情報の有用性の壁」である.本講演では,この研究を通して得られたこれらの知見を共有する.

講演 3:
(TU3)AIにおける分類問題の評価指標とその解釈

青井  久 (立命館大学)

[抄録]
分類問題は,機械学習の中でも最も広く使われる基本的な問題の一つである.しかしながら,その評価指標は数多く存在し,現実のデータに対しては複数の指標を駆使して解釈を与えることが求められる.例えば,一般には正解率(Accuracy)だけでは正しく評価できない場合が多々生じる(例:データが不均衡な場合).様々な状況に対応するべく,他の指標や閾値との兼ね合いを元に検証する必要がある.評価指標は数学/統計学の理論を元に展開されており,その関連を知ることで議論の見通しが良くなることが期待できる.
本講演では,長らく用いられている基礎的な指標(適合率,ROC曲線など)から,実用を踏まえて新たに用いられるようになった指標(マシューズ相関係数,Cost曲線など)に至るまで具体例と共に紹介する.