シンポジウム3 講演1

ロボティクス、AIを活用した微生物検査グラム染色自動化機器の開発

平岡  悠先生

演者:
平岡  悠
(大阪大学医学部附属病院, 大阪大学大学院医学系研究科人工知能画像診断学, 株式会社GramEye)

[抄録]
抗菌薬の不適正利用によって抗菌薬に耐性を持つ細菌が発生する現象、薬剤耐性菌問題による死者数は、2050年には悪新生物による死者を超え、年間1,000万人になるとされている。抗菌薬の適切利用のために、迅速安価な微生物検査・グラム染色が有用であるとされている。株式会社GramEyeでは染色工程・顕微鏡動作・AI画像判定までを一気通貫で自動化するロボティクス・AIを活用した医療機器の開発を行っている。グラム染色は世界で最も実施回数の多い微生物検査で、迅速安価に菌種推定が可能であり、感染症治療方針立案に有用な検査であるが、染色から顕鏡判定までマニュアルで行われる検査であることから結果のばらつきと検査報告返却までの時間の長期化が発生しており、検査本来の潜在的な力を十分に引き出せていない状況である
本製品では、染色工程から顕鏡工程までをロボティクスによりノンストップで自動化、AIによる菌種判定まで実施し、結果報告の迅速化、検査室の業務量の低減、報告結果の標準化とAIの継続的なアップデートによる詳細な菌種推定を実現する。
現状は、グラム染色結果の活用が臨床現場で十分にされていない。その理由として、再現性の低さ、不十分なデジタル化、結果の解釈の困難さが挙げられる。本機器はこれらの課題を解決するものであり、主科の医師がグラム染色画像を見ながら感染状態に関して議論を行うことが将来的に可能になるものである。
また、検査手順の標準化、トレーサビリティの確保は検査としてのエビデンスの蓄積を促し、国内外においても類似コンセプトの製品開発は確認されておらず、日本発の国際的な塗沫画像プラットフォームの構築が期待される。

[略歴]
大阪大学医学部医学科卒業・医師。学生時代よりグラム染色AI開発に学生チームで取り組む。株式会社GramEye創業後は代表として各種ソフトウェアの技術選定など開発業務中心に実施。初期研修医として臨床業務や微生物検査を実施しながらの開発業務を行い、臨床ニーズ、検査フローに最適化されたシステム設計、技術選定を行う。

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